肉と神話と欲望と

2日目-1

多くの神話の舞台となった宮崎県高千穂町。ずっと、行ってみたいと思っていた場所に行く機会が降って湧き、旅行前から私の胸は高鳴りっぱなしだった。
宮崎県は山が多いということを前回書きましたが、その山をつなぐための橋も多く、高度が上がった車窓からの景色はすこぶる絶景。連なる山々、深い谷には小さな集落、突然現れる巨大な橋。はえー、すっげぇ、と眺めていたら、案内人から「この辺りはもう高千穂と同じ景色。どこ行ってもこれ。」と身も蓋もないことを言われ、ちょっと脳が冷める。
先ず我々が向かったのは、高千穂がまだせ市場。この日の昼食は高千穂牛だ。

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等身大の牛がお出迎え。かなりの巨体。

牛肉。牛肉と言ったらステーキ。そう、ここで食べるのは高千穂牛ステーキだ。実は前日、美味しい料理と焼酎で大いに気分が盛り上がり、二軒目に繰り出した先でもしこたまビールウイスキーを呷った末に、べろんべろんでホテルのベッドに倒れこんだ私にとっては、かなり厳しい戦いだ。ヘヴィー級と言ってもいいだろう。隣を見ると、私と同じ道を辿った夫も悲壮感を漂わせている。あんなに大好きなステーキなのに…。しかも彼は朝食も食べておらず、慣らしゼロである。
ここでは100g単位で追加注文が可能。別の部位を頼むこともできる。正直100gで十分だと思っていたのだが、私の年齢の倍以上生きている案内人が「300gは食える」と豪語していて、100gとか雑魚い数字をとても言い出せる雰囲気ではなかった。結局、ヒレ100gとロース100gを注文する。ソースはおろしソースにわさびが添えてあり、ご飯に合う味つけ。で、肝心の肉ですが、確かに美味しい。柔らかくてストンと切れる。*1というか、多分脂が乗っている方なんだと思う。日本人に好まれる肉質かと。私はどちらかというと赤身好きなので、好みからは外れますが。でも美味しいですとても。さすが全国和牛能力共進会のグランドチャンピオン。*2

この日の天気はあいにくの雨模様。それに加えて平日だということもあり、観光客もまばらである。案内人曰く、土・日の混雑っぷりは尋常でないとのことだったので、今のうちに高千穂の中でも人気のある所を見ておこうと、先ずは天照大神が立てこもりを決め込んだという、有名な天岩戸神社へ向かう。

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天照大神(アマテラスオオミカミ)の弟、須佐之男命(スサノヲノミコト)が乱暴の限りを尽くしていたことを嘆いた天照が、岩の中に篭城したとの逸話のある神社。ていうか立てこもってる場合じゃないと思うけど…弟も弟なら姉も姉だ。
(詳しくはこちら。素晴らしいイラストとともに詳しく書かれています↓)
【公式】天岩戸神社(あまのいわとじんじゃ)|天岩戸神話|宮崎県|高千穂町

本堂でお参りをした後、困った八百万の神々が緊急会議を開いた天安河原へ向かう。因みに、御隠れになった天岩戸は禁足地なので行けません。

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川沿いの道を進み…
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到着。洞窟に小ぶりな鳥居とお社が鎮座している。

天安河原は、スピリチュアルカウンセラー江原啓之さん曰く、日本の中でもかなりのパワースポットだとのこと。ここらで石積みをすれば、願いが叶うと言われている。江原さん云々はともかくとして、天安河原宮を取り囲む景色は圧巻…。
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見渡す限り石、石、石…確かに、煩悩という名のパワーを強く感じる。
それにしても、道すがら岩はゴロゴロと転がっていたが、積み重ねられるような大きさの石は見当たらなかった。早い者勝ち、ということだろうか。いや、まさか皆さんわざわざ持ってきているのか…?それとも、他人の願いを破壊して積み直すのだろうか。神の御許で繰り広げられる欲望の輪舞(ロンド)…。

おまけ。天岩戸神社近くで見つけた、これもまた神の名を借りた欲望の欠片。
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上手いコト言ったつもりか…!

*1:どうでもいいけど「ストンと切れる」と聞くといつも日本直販が、穴の空いた包丁でトマトを切っていたことを思い出す

*2:平成19年