若いツバメ

私の生まれ育った家は、離れの一階部分がガレージになっていて、その天井に剥き出しになっている鉄骨にはツバメが巣を作り、出産育児を繰り返していた。
当然その間、駐車している車はツバメの糞害を受け悲惨な状態になるのだが、毎年のことなのでこちらも慣れたものでブルーシートを貼ったり、雨傘を糞受けに吊るしたり、室内ガレージにもかかわらず車にカバーをかぶせたり、万一汚れてもすぐに拭えるように雑巾を常備したりと、様々な対策を講じていた。

ツバメは、毎年同じ巣に帰ってくる。成長してつがいとなった子ツバメが、生まれ育った巣の近くに巣を作ることも珍しくないという。なので、今年は3世帯のツバメがいるが、どれかは去年と同じ夫婦だろうし、他の夫婦はウチがどちらかの実家なのだろう。
ともかく、毎年の風物詩なので家族一同なんとも思いはしなかったのだが、今年は少し困ったことになったという。

先週、隣の県での法事のついでに、実家に一泊寄らせていただいた。
よく来たな、元気かね、変わりはないかね、と居間で両親と話し、まぁ、今年はえらいツバメの声が響くが、はてな、とガレージにつながる勝手口へ向かう…途中の三和土をビュンビュン飛びかうツバメの姿に驚いた。(向こうも急に出てきた私に驚いていた)
要は、家の中に巣を作られてしまったのだ。こうなると、糞害はともかくとして、扉を常に開けっ放しにしておかねばならず、まぁ玄関ではなく勝手口だったからまだ良かったものの、いやいや数年前にうちには下着ドロが侵入って往来にヒョウ柄だの何だののパンツがぶちまけられていて大騒ぎ*1だったではないか、いかんだろ。ということになっていた。*2仕方がないので、今年は勝手口を朝早くから夜が来るまで開け放ち、ツバメの通り道を作っているとか。なので家を空けることができないという。
とはいえ、母は「朝にウッカリ扉を開けるのを忘れると、親ツバメがすりガラス越しに訴えてくるのよ!」などと何十年目かにして突然起こったツバメとの交流を楽しんでいるようでもあった。と同時に、来年はなんとかガレージに誘導したいが巣を壊すのは忍びない、と、ジレンマに陥っていた。

私が見た頃には雛はかなりの大きさになっていて、数も4羽孵った内、3羽しかいなかった。落とされていたという話も無かったので、おそらく1羽は先に巣立ちを済ませたのだろう。残りの3羽も、もう一息といった感じ。
なんとか強く生き延び、また我が家に戻ってきて母をヤキモキさせて欲しいものだ。


f:id:kanrocoffee:20150704100201j:plain

*1:第一発見者の母は、警察の調書のため、落ちているパンツを指差す姿を写真に撮られていた

*2:田舎は本当に鍵をかけないが、これ以降は我が家を中心に周りの家も鍵をかけるようになった。幸い金目のものは一切盗られてなかったので、犯人は変態紳士だといえる。